実によくあるお話。決まった形の懐石料理を提供する純和風老舗旅館。その居住まいとお料理の空気感で馴染の固定客が利用してくれる。それがメインターゲットで、SNSなどで興味本位でやってくる一見さんの富裕層は二次的顧客。日本文化を体験しようとするインバウンドの皆様にもそれが受けるから、変化させる必要など無い。
それが永遠に続くと思っていたら、オーナーが文化的サービス、居住まいは保つが、食事として「ビュッフェ形式、お酒もドリンクもアラカルトでインバウンドを獲得します!」と言い出した。オーナーは毎食後の御膳に残された大量の「和食」の有様が悲しくなり、顧客に応じたサービスを展開しようと相談し、それを実行できる番頭を雇用した。それは老舗に傷を付けると老舗を誇りに思ってきた料理長をはじめ仲居さんも辞表を出した。
成る程なと思う。大学と言うところも同じだ。変わるべきだが変われない。今に拘泥するというか、時代の流れに逆らって、基礎・基本を学ばせるのが大学と、正しい一面を捉えて変わらない。学科の壁にも拘泥して、ベルリンの壁以上に強固な壁を築き上げ続ける。城塞都市よろしく、外の世界が見えなくなる。強みを伸ばすと言っても、内側の強みであって絶対値では無い。
変わらぬ味は良い。しかし、食べる人は変わっていくのだ。我が家の味と言ったって、永遠不滅のものでは決してない。塩味や甘味を抑えた今風に変化してくのは、三が日、そればっかり食べ続けるという必然性がなくなったからでもある。
大切なのは次世代を育成する機関であることを忘れないことだ。偽善では無い。決して忘れてはならない。未来をイメージして次世代のあるべき姿を描き、自らを変化させていく。第五期中期目標中期計画に取り掛かっている方々は、肝に銘じねばならぬ。