必要不可欠な機能さえあれば

新品で3万円のPCがあるのだから、旋盤があったっておかしくない。とある道具として使うために購入してみた。日本製ではなく、どこぞの大国製品である。国際郵便で送られてきた箱を開封すると、マニュアルと言うものが全くない。ホームページからダウンロードするなどという事もなく、自力で考えろ、買った奴が悪いと言わんばかりの外連味の無さに、かえって気持ち良くなる程だ。やたらと懇切丁寧な日本製品に慣れてしまった自分に、活を入れてくれる製品である。

なんのことは無い、まぁ、あれこれいじってみて、10分ほどで「成る程」となった。3万円である。恐らく日本製品なら10万円になって、丁寧なマニュアルと、ごうごうと音を立てることなど無いのだろうなと思いつつ、自分のやりたかったことはこれをベースに出来そうだと納得できる代物である。3万円で作ってみろと言われたら、嫌だと言える状態にはある。買った当人としては黒字商品であるからそれで良い。

起動させてみると驚くことが沢山ある。これは面白い。高校生時代に初めて旋盤に触った時の驚きと感動がちゃんとある。全て自分で考えてアナログ操作、教える人は鬼教官。その鬼が居ない分、気が楽だ。試してみると十分に働くことが判った。日本製品には絶対にないいい加減さと、購入した人間に全権を渡す気前の良さだ。

電子化された上等の機械しか知らない人には絶対に使えない。原理原則を知っていなければ、恐ろしくて電源すら入れられない。逆を言えば、きちんと機械の特性を理解している人ならば、これで良いのだ。初めて使う人、知らない人にとって懇切丁寧な道具に仕上げていった結果、基礎を理解する能力を人から奪っていったのではないか?そんな機械は危なくて要らないと思われるかもしれないが、新しい機械を作る人には絶対に必要な知識、知恵なのだ。日本のモノづくりの弱さの根源に触れたような気がした。手取り足取りは、ある場においては悪である。安い買い物であった。