研究様態の象限表現というのがありまして、エジソン象限とかパスツール象限とかの「あれ」ですよ。純粋な応用研究、実用思考の基礎研究とか、純粋な基礎研究とか、そして雲をつかむような研究とか。それらを4象限に纏めると、軸が意味付けされてきて、実に愉快なのですな。研究テーマ設定ってどの象限でも良くて、企業との共同研究にしても、純粋な開発の為の応用研究も、実は取り組んでいると「なんだこれ?」を見出したりするし、基礎研究だと思っていたら、企業が欲しかった具体事例なんてこともありますからね。
文科省も経産省も共同研究を通じて大学が生んだ知恵を社会に活用する努力をしろと言うのだけれど、逆に「社会は本当に何かを求めているのか?」と問うてみたい。勿論、省エネ対応とかそんなことであれば取り組む方向性が明確だから何とかなるのでしょうけれど、「新奇な事業で世界に売れる商材を作れ!」なんて大学に求められても困ってしまうわけですよ。学生ベンチャーにしても、いきなりユニコーンなんて生まれ無いしね。
いろんな象限をちりばめた研究スタイルが工業大学としては良いと思っているわけです。勿論、学理の探求で純粋な基礎研究に取り組んで頂かないといけないのですが、それが何を求めているのかのゴールを、経営側としてはしっかりと認識しておかないといけないわけです。そうで無いと、未来志向のお問い合わせを逃してしまう事になる。「何だこれ?」研究も実は企業にとっては立派な投資対象になるわけですよ。長いお付き合いになって、研究者もじっくり取り組めて有難い。
「何だこれ?」研究は実に面白くて、小生もネタは有るのだけれど、今はそれに手を付けることが出来ないわけで、余計に他の研究者の皆様には「何だこれ?」に挑んで頂きたいのです。勿論、何時までも何だこれでは困ってしまうのですが、いずれ芽が出る花も咲くかもしれないわけですからね。決められた未来をターゲットにするのではなく、「これってどうなのだろう?」を図書館(死語?)に籠って散々調べ尽くして、当該分野のファーストペーパーに行きついて「やる価値ありそうだ」と思った青春時代。懐かしい。