とあることがきっかけで、現在の指導テーマの立ち上がりを思い起こし記録することが出来た。これはこれで懐かしく、あまりやらないことなので、有難いと思うことにした。タングステンカーバイドを結晶方位に依存することなく成形していく手法の学理思考から市場化までを一気通貫でやってきて、それをDコース学生殿に纏めて頂いているわけだが、世界初の取り組みがどのようなプロセスで生まれ出たのかを振り返ることは意義深い。
学会で聞いたからとか、予算が欲しいとかそんなことでは無く「社会にはそんなニーズがあるのだが、それを叶えることは今のサイエンスでは出来ていないわなぁ」という未来のあるべき姿からバックキャスティングでテーマ設定に取り組んで、どうやったら共同研究に参画する企業が自発的に儲けることが出来て、且つ、学問的にもちゃんと論文になるのかを見据え、ガントチャートを組んでいく。エスケープゾーンも見定めておく。
実際に動き出してみると、思った通りに行き過ぎる部分と、ちっとも上手くいかない部分と両方が出てくるのは当然のこと。工学として取り組むわけだから、産業界が量産に取り組んで利益を上げることが出来ることをイメージすることは当然で、且つ、企業にとって差別化出来なければ何にもならない。知財での差別化は、水素燃料電池の様に複雑怪奇で排他的であれば有効だが、少ない知財で目に見える形を作ることは逆効果だ。知恵を共創できる共同研究を通じて、量産をイメージして頂くのが良い。
可能であればファンド提案がよろしい。ファンド提案のお陰で、共同研究参画各社の役割を定量的に思い出せ、今、量産に繋がっている技術の初期の初期の開発状況が浮かんでくる。20年近くの月日が流れると、記憶と事実にずれが出てくるが、偶然にも残っていた電子ファイルによって、誰と何をやっていたかが思い出される。お役所の皆様の若かりし頃も思い出されて、今、ご一緒させて頂いているきっかけも懐かしく有難い。そこそこ以上のファンドに若い頃から挑戦するべきだ。改めてそう思った。今が解る。