暗箱

技術の進歩が加速させるブラックボックス化。ボタン一つで結論が出る。AIの進化は更にそれを進める。スマホなどが今程の低価格を実現しているのは、まさにブラックボックスのおかげである。なんだか全てがゲーム化されている感じがする。予定調和の中で考えたふりをする。ボタンか無いと何もしなくて良いと威張りまくる。魂消る。

産業界でもいよいよもって影響が出てきているようだ。壁前面に広がる電光パネル。その中に何があるのか考えることも無い。それはそうだろう。学生の時代からボタンの中で生きているのだから。判り切った過去を教科書として学び、それを具現化させる装置と呼ばれる魔法の箱と戯れる。与えられる箱から出てきたものを疑いも無く受け入れるが、人から受けたものは信じない。そんな時代は何を産むのだろう。

ボタンの無い時代であれば当たり前の経験が、ボタンによって未知の過去になる。ゲームと言う決定されたストーリーだけに安住の地があると信じ、ひたすらボタンを押し続ける。そしてAIの台頭によって押すボタンすら取り上げられた者たちは、一体、どこに行くのだろう。それが技術の革新ならば人はその世界で何を実行するのか。脳に電極を突っ込まれて、マトリックスの世界になっていくのだろうか。

現実が仮想であるとするならば、血と汗は何に何の価値があるのか。価値の無い努力で切羽詰まる毎日を送ることが与えられた経路ならば、それは悲惨過ぎるのではないか。ブラックボックスが何を生み出していくのか。数ナノメートルの中に記憶がある世界。ブラックボックスだが、停電になった途端に何とかしろと叫ぶ大人たちがTVの向こうに居る。ブラックボックスの世界では無い世に生きた方々が、自らブラックボックスになっている。そんな日本にどんな未来があるのか。恐ろしい事だ。