丁寧な挑戦

イジング模型を使ってスピン問題を解いて磁石を考える(乱暴な表現だ)ということを、大学院の講義で習い、脳が流れ出た記憶がある(大げさ)。レンツ先生のお弟子さんが考えて、そのお弟子さんのお名前がイジングさんである。2種類しか選択肢の無い点同士の配列の組み合わせで物性が決まるという根本原理で、通常、組み合わせの最適解を求めようとする場合のアプローチ手法に選ばれてきた。交差点がやたらとある街で、行きたい場所に最も早くいきたいと誰もが思うだろうが、その経路を選ぶ時の考え方だ。

人間は案外、あそこが混んで、ここは信号がシンクロしているから、こっちを選ぼうとか、割と瞬時に考えて実行に移るが、計算機の場合には演算数が膨大になって時間が掛かる。量子コンピュータの考え方の登場でイジング模型系ではない考え方が登場し、加えて、巨大なコストを要する量子コンピュータではなく、古典コンピュータを使って最適化問題を高速に解くシミュレーテッド分岐アルゴリズムが東芝社から発表された。

東芝社は紆余曲折、今に至っているが、このような新しいことにチャレンジをされていらっしゃることに感激した次第。日本企業の意地の見せ所ということか。尤も小生は、その分野の専門家という事では無いので「そんなもん、大学ではとっくの昔のお話だ」と言われてしまうのかもしれないが、具体的に計算機がそこで動いていますよというのを見せられたのは初めてなので感激したという事だ。

マイクロLEDを並べて有機ELでは無い自発光ディスプレーを作るなんてお話を大学人から聞いてはいたものの、本当に動いているものを企業の方から見せられると、ものづくり日本企業の底力を感じて嬉しくなるのだ。超技術に果敢に挑戦する気概が、まだ日本企業に残っていたのだなと、これが正に日本の生きる道であろうと某所で感銘を受けた。やはり挑戦である。その心である。それを暴風雨に晒しながらも消えない程に燃やしたいと、ぐっと握りこぶしを作った私であります。