適正価格

大学との共同研究に掛かる費用を正当に企業は支払うべきだと、3年前に文科省が大学支援を絞っていくことの見返りを企業に求めたわけだ。実際のところ、企業は大学の知識に対して、相当に安く見積もって言いよって来ていたのは事実である。きちんと積算すると間違いなく大学は赤字。だからこそ、正当な対価を企業は研究の直接経費を算定し、その運営に掛かる費用を乗せて下さいと申し上げているところである。

それではこれまでどうなっていたかと言えば、共同研究の運用に掛かる費用は大学が補填していて、その赤字分を交付金から埋めていく措置を取らざるを得ない。とすると、大学業務の一つの柱である、勿論、国が求めている企業の大学活用において、その活用が進めば進むほど、国の歳出が増える方向に行く。

その赤字がどんどん続くとどうなるかと言えば、ソ連の崩壊の如く、負債過多で組織全体が沈没に向かう。だから、そうなる前に、文科省が大学と企業との間できちんとした成果を出すことを前提に、金銭計算をしっかりとやってくれと言ってきたわけだ。法人組織であるわけだから当然の活動をせよと本社が支社に伝達しただけのことだと思っている。

蓋を開けてみると、本社からの伝達後3年が経過した時点で、その取り組みに多くの国立大学法人組織が着手し、あるいは実行し始めている。企業とのお付き合い型から成果主義へと移行しているわけだが、ここで重要なのは、企業のためだけの活動になっては本末転倒で、そこで得られた有用な知識を関わった研究者、学生が身に着け活用できるようになっていなければならない。共同研究が増えたら論文が減ったのではいけない。この辺りのバランスが極めて難しい。容易に解決には向かわない。悩めるところだ。