大学人だなぁと、なんだか思う瞬間というのが床や椅子の上で起きた時。机に突っ伏して寝るのではなく、床の上こそ醍醐味である。疲れなど感じない若い時だから出来る技かもしれないが、先輩が「ふつう」の椅子で寝てしまうと丸椅子を並べて寝るしかない。ガマの油売り大学は夜は冷える。氷点下20℃になる地域だ。今はそんなには冷えないかもしれないが、北海道からこられた先輩が「こんなに冷えたことは無い」というくらいに冷える。その冷えた床から身を護るのが椅子の上で寝る技術である。
寝返りなどとんでもないというか、そもそも数日間、寝ていない状態で椅子の上に横になるのだから、寝返りなどあり得ず、ぐわっと意識が無くなるだけであって、寝ているという意識も無い。意識が戻った瞬間から活動を始めるのだから、横になっていたということは丸椅子が5,6個並んでいる状況を確認して初めて分かることだ。それが研究者であり大学人の有り様である。
辛いかと聞かれたら、そうではないというのが本心だ。面白くて研究をしているのだから、寝ている間に何か変なことになっていたらそれこそ大変であって、辛さとかきついさとか、そんなものは何処にもない。それが大学という城に籠っている、正に籠城戦の面白さだ。何も分からない。だから挑戦する。挑み戦い、その結果、あら、違ったということばかりだが、時にはあたる。その瞬間を想いながら丸椅子を並べる。
流石に、この御年になると厳しい。丸椅子は部屋には無いからプラスチックの会議椅子を並べるわけだが、この形状がよろしくない。座る時には良いのだが、並べて寝るには最悪の形状だ。反った皿のような形になっているのだから、横になる者の気持ちなど何も考えていない。並べて横になっても心地よく疲れが取れる椅子。それこそ、家具屋が大学に納入するべきである。会議では眠くならない座り心地の悪さを呈し、本物の研究者には優しい椅子。どなたか、寄付して頂けないだろうか・・