大いなる敵が現れ、水辺に樹木が生い茂る中、枝葉が水辺に落ち泳ぐことすらままならない時、アカンソステガは地を掃う様に歩き出した。争いを避け、巨大な敵から逃げ、浅瀬や水際に進出した時、陸上生活に適応し始めた。海水域から淡水域へ、そして地上へと、平和を愛した先祖殿は数百万年間水辺で進化を重ね、ついに陸上へと推移した。3億6千万年前の出来事である。
それ故に、人類は温泉を愛するのではないかと勝手に思っている。海水という母なる領域の成分を遺伝子が求め、それと出会うことでリラックスする。特に数百万年も植物性有機物の「水たまり」に居たもんだから、植物性有機物のフミン酸などが含まれている温泉は、短時間で温まり、実にゆったりできる。
これを「モール泉」と呼ぶのだそうで、元来はドイツ語の亜炭のことらしい。植物由来の温泉の一般的呼称となっているんだそうだ。大陸性の大地である日本海側に多く見られるが、小生的には石川県内のモール泉が肌に合う・・ことが最近分かった。通常の温泉などは毎日行ったら飽きるのだが、これはなかなかにして心地良い。妙な珈琲色に最初は戸惑ったが、入ってみるとこれが実に宜しい。
温泉の色は様々あって、真っ白なものなどは、これは見た目にも美しいのだが、抹茶色とはどうなってんのと調べてみると、フミン酸は可視光の波長を吸収するのだそうで、黒く見えるのだそうだ。めんつゆに飛び込んだみたいで愉快である。処変われば温泉も変わる。それもまた醍醐味であろう。遺伝子がそう語っている。