シベリアにて

心臓を取り出して弁を人工のものにするという手術があるんですが、体温をゆっくり下げて冬眠状態にさせてやるんですよ。身内でやった人がいらっしゃるので知っているんですが、人工冬眠で宇宙のかなたに旅をするっていうのが、現実に可能なんだなって実感したのはその時からでした。もう、かれこれ20年近く前ですけどね。

一昨年くらいからシベリアの永久凍土が溶けて、人類誕生前から氷漬けになっていたウイルスが活性化して空気中に放出され始めているというニュースに時々出会うようになり、最近ではTVのネタにもならないくらい。今を騒がす新型コロナもそんな奴なのかなって思ったり。なんせ、目に見えませんからね、恐ろしいったらありゃしない。それより大きな生物と呼べるレベルのものが凍っていて、そして蘇るってことは無いのかなと思っていたら、ロシアから発表がありましたね。

100μmもある多細胞生物が、3万2千年の時を経て「起きた」とのこと。既に餌に食らいつき、活発に運動している様子が動画で公開されているのを拝見したのですが、ちょっと何と言って良いのやら。それまでは7億年前後にあった全球凍結の時代の、それこそウイルスれべるものが生き返りましたってお話というか映像を見た時は、生命って凄いものだなって実感していたのですが、100μmという目に見えるサイズの代物が冬眠から覚めるってなんだか凄いなって。

この研究グループの方々は人体の冷凍保存のキーとなる、細胞や臓器が冷凍状態で破壊されない物質を、このワムシさんから抽出して、人間の冷凍保存に応用したいんだそうで。遠い未来で目覚めたとして、何か面白いことありますかね?一週間前のことだって、えっらく昔に感じる程に時の進み方が激しいわけだしね。今、この時に体験するから尊いわけで、無理して未来に飛んでいく興味など無い。それにしても永久凍土の解凍ってこれからも何だか目が離せないなって、人間が免疫を持っていない殺人ウイルスの解凍だけは勘弁して欲しいと願う私であります。