新年度

新年度である。既に2日目であって、新年度2日目というのが正解だが、その辺りはご勘弁いただくとしよう。年度とか節目とか、そんな単語は好きではない。いろいろと変化もあるが、年度が変わった程度で人間が変わるものではないので、本質的には継続ということだ。常に変革を続けていく。それだけのことだ。

昨日、買っておいて封も解いていないCDを聞いた。久しぶりにそれなりの音量でオーディオ装置を動かした。何故久しぶりかは勝手に想像して頂くとして、やはりそれは素晴らしい。ハイレゾ以外は音楽ではないという風潮があるが、それは電子的録音に向けられた表現であろうと思う。バイオリンでもウクレレでもカスタネットでも、リアルな人間がリアルな環境で目の前で演奏する、あるいは自らが演奏するという体験をしたものにとって所詮はデジタル音響である。好みの場を作るという点において反対はしない。反対はしないから他を小馬鹿にして排斥することはやめて頂きたい。

その楽曲が創造されたのは大略1720年と言われる。幅があるのは自著の楽譜が残されていないからで、もしもその奥様が写譜をしていなかったら永遠に消え去っていたことだろう。その写譜が出版され、偶然、バルセロナの古本屋にて1890年に発見された。正に発見されたのであって偶然の出来事であった。その偶然が無ければ、我々はその芸術に永遠に触れることはなかっただろう。

開封して聞いてみると、妙なエコーとデジタル録音ならではの機械的味付けでうんざりだ。ただ、BGMにはうってつけで、引き込まれたりしないから他の雑音を消すくらいの働きはしてくれる。多くの方はそれを良い音として楽しむのだろうが、良いホールで良い楽器を真面目な演奏家が操った出来事に遭遇していないならそれも納得だ。本物を追求しよう。新年度も頑張っていきたい。そう思う。