素材展に想う

某所で新素材を集めた展示会があり、その盛況ぶりに驚かされた。従来のビジネスに用いてきた機器を活用して、素材を変えて新規ビジネスをということなのだと思うのだが、素材展の展示ではそれはなかなか難しい。既になんらかの声が掛かっていて、その素材を学びに行くということなら良いのだが、初見の素材を使いこなすことなど不可能である。ちょっと試して、そこそこ出来て、大手に持ち込んで「おととい来い」と言われてお仕舞なのだろうなと、やや暗い気持ちになった。

素材屋さんって、お客さんが加工屋さんなのは当然なのだが、加工屋さんが最適解を知っているわけでは無いのだ。何よりも、素材屋さんが「誰を幸せにしているか解っていない」のだから、それを加工する人が、その素材の持つ究極の力を理解できるはずが無いのだ。素材屋さんが「こんな願いの人々を笑顔にします」くらいのプレゼンをして頂けると、加工屋さんもビジネスをイメージ出来るであろう。加工屋さんと素材屋さんがそんな対話をして頂けると、日本の輸出赤字も減る方向に向かうのかもしれない?

樹脂も金属も異口同音、カーボンニュートラルが謳われる。地球温暖化、海水酸性化を抑止していくためには必要なことであるが、プロセスの結果、そうなることが大切なのであって、カーボンニュートラルを実現させるために、それ以上のエネルギーを投入して地球を暖めていないか。太陽光パネルを作るのに、太陽光パネルで発生できるエネルギーよりも大きなエネルギーが必要なのと同じだ。

新しい素材に出会えなかったということは、展示会に対しては、既に加工技術が確立されているものを、当該地域に持ち込んだということか、それとも本当に、構造材として新奇なものが無いということなのか。既知の素材には既知のターゲットが存在する。そのターゲットは海外においては既に陳腐だ。複雑な物理を語ってもだれも聞いてくれないということなのかもしれない。そうだとすると更に悲惨だ。輸出品がどんどん減っていく日本。買ってくれない日本製品。真面目にコツコツだ。そう思う。