カラスに負けている

小生が研究室の学生となった時から、技術系商社の方に助けられてきた。ものづくり系研究室でずっとやってきたから、こんな部材が必要だと指定して購入するだけではなく「こんな機能を持ったものを紹介して頂けないだろうか?」とお願いをする事が沢山。無茶なお願いも沢山あったし、ガマの油売り地区からお江戸に出向いて購入してきたこともあった。本当に「こんなものがあったんだ!」と驚かせて頂ける物品が沢山あった。

鶴舞にやってきてからというもの、最初に戸惑ったのは商社さんとのお付き合いであった。自動車系企業とのやりとり慣れをされた商社の皆様は、大学の研究者から「こんなものを?」と言われても「型番が無ければ受けられないね」と完全に見下してきた。見積もりをお願いしますと言っても、一個だけの、しかも、買うかどうか分からないものなんざ相手にしていられないのでね、別を当たってくんな!と、時代劇のようなやりとりをさせれて辟易した。どうすりゃ良いのだと悩んでいた時にO社のK氏がやって来た。

どんな無茶でも靴を減らして頂けて、研究が進みだし、新しい機械を作り、データを出し、その度に、新しい注文をさせて頂いて、こんなものかあんなものかと、一緒に考えて、共に研究を進めて頂けた。数年の後、K氏は別の部局を担当されるということで、I氏に代わられた。K氏からの申し渡しというだけではなく、I氏は誠心誠意という言葉はこの人の為にあるのだと、パートナーとして一緒に研究をして頂いた。今日があるのはI氏のお陰である。感謝している。

そのI氏も偉く成られて現場を交代することになり、代替わりの時を迎えてしまった。生涯忘れることは無いので、精一杯のエールをお送りさせて頂くのみであるのだが、辛い別れである。で、代替わりになったわけだが、途端にお願いした場所にお願いしたものが届かなくなった。次いでだからここで良いのだろうということだろうが、そういうモノでは無いのだ。自らの精一杯と顧客満足とはまるで違う。顧客満足を目指した前任の想いが伝わらないと、O社様も哀しいことになろう。Z世代だと、それだけでは済まされまい。これが日本の現状である。