郡道

全く感じないのだが、名古屋の街はプチバブルだそうだ。2億円程度のマンションが瞬殺で売れてしまうというお話を伺った。猫を飼うと3ヶ月分の家賃をプラスするとか、じゃぶじゃぶとお金を持っている方が溢れているらしい。学生時代にバブルと呼ばれるものが弾けてしまい、就職先がほぼほぼ無くなってしまった状況で、現在に至っているので、億ションなどが存在すること自体が不可解である。

今朝、郡道を通ってみたら、長屋があったところにスギ薬局が鎮座ましましていた。数日前には何か工事をしているなという状況だったのだが、いきなり薬局が出現した。薬局と言っても、最近の店舗は日用品や衣類や、着飾るようなことを考えなければ1店舗で全てが揃ってしまう萬屋である。街のど真ん中に出現して生活スタイルをガラッと変えるパワーがある。

その昔の薬局は間口2間、白衣の紳士がガラスのショーケースの向こうから現れて、異臭の中でぼぉっと立っているというところだったが、コンビニよりも便利で、近所にあったら便利(あるけど)な存在である。郡道に出現したのは時代の流れなのだろうなと、戦後の古い町並みが消えて樹脂で覆われた建物が現れ、無機質な空間を作り出す。

地震で倒壊する前に、長大な長屋が取り壊され街が変化していく。愛知郡が作った群道という荒畑地域ではとても歴史のある街並みが今様に変化していく。形あるものはいつかは滅びる。当然の出来事ではあるが、気に入っていた街並みが平凡になっていく様は少し寂しい。変化を進化とみるか、エントロピーの増大と捉えるか、恐らくそれは後者であろう。乱雑はうっかりすると規則性を伴って、妙なエネルギーの集中を生み出す。そうならないように、常に意識を高く持ってエントロピーを減少させる努力をし続けないと、心地よさは進化しない。備えあれば患いなし。それは薬局の存在では無く、自らの意思にある。