功罪というくらいだから個人的に良い・悪いと感じているところということになるが、それはあくまでも書き手がそう感じたということであって、一般論などとでかい事を言うつもりはさらさらない。電力大喰らいの真空管だが、電子計算機を実現させギアの組み合わせと手動回転によって実現していた計算であったが、式の入力とパラメータの数値入力を別々に出来るプログラミングを可能としたのは真空管である。
その実現と同時に人類が獲得したのが、計算に伴う電力の大量消費である。電力大喰いの真空管をなんとか省エネルギーに出来ないかということで、偉大なるバーディーン達が現在のメモリ等、半導体平面上にトランジスタを作り上げたのが1956年の出来事である。それから僅か六十数年しか経過していないのだ。
一方で、錬金術の時代に精緻化された化学力によって使いこなしてきた金属とは違う、半導体という謎めいた素材の精錬が必要になってきた。鉄鉱石から鉄を取り出す最終工程において、鉄に付いた酸素を一酸化炭素と反応させて、純粋な鉄を取り出すために1200℃の温度が必要であった。精錬技術の発展がそれを実現し、人間は純粋な鉄を道具に様々なものを創り出した。半導体のシリコンにおいてはそれよりも高い1400℃を超える温度を必要とした。
要するに、省エネルギーを実現しようとしたら、それまでよりも大きなエネルギーを必要とするようになったということだ。エントロピーを下げたければ、そこには巨大なエネルギーの投入が必要となることは熱力学から明らかである。便利を電気で創り出す。木炭、石炭、石油、天然ガス、原子力。燃やすものは様々だが、便利の獲得のために地球を暖め続けてきたということだ。