8月の終わりの頃のニュースで、南海特急ラピートの台車に30cmの亀裂が見出されたという記事を見た。本来であれば大騒ぎになっても当然と思うのだが、ニュースバリューが今の日本では無いという事か、大した騒ぎになっていない。大量輸送機器の足回りの「割れ」である。これが重大ニュースでなくてなんであろうか。ほぼ、騒ぎが収まったら、御堂筋線で、同じ会社が製造した車台で割れが見つかった。
その申請を受けた国の運輸安全委員会は重大インシデントに認定しなかったとのこと・・・日本の工業製品に対する認識が確実におかしくなっている。地下鉄に乗っていて、いきなり車軸が折れて、数秒で停止するとしたら、どれだけの運動エネルギーが解放されるのか。乗客は宙を舞い、壁や支柱にたたきつけられ粉砕するだろう。そのきっかけとなる状況を「重大」とは認めないのが日本らしい。
割れていいんだと思ったら、どんどん割れる製品を作るだろう。何故、米国ビックスリーが地の底に堕ちたか。あの会社がこのレベルの製品で売れているから、うちもそこまで落とそうよ。その落とそうよ合戦の結果、気が付いたら誰も買わない車になった。売れていたのが日本車だから日本を叩こうとなったわけだが、工業の基本は安全である。当たり前の話である。
モーターを支える部分で亀裂があったそうだが、極めて重量の大きいモーターが、もしも走行中に脱落して、民家の屋根でも突き破っていたら・・恐ろしくて想像も出来ないが、モノづくりとそれを管理している団体の堕落さには得も言われぬおぞましさがある。これが日本なのだなと寂しくなってくる。堕落してはならぬ。そう思う。