プレス加工が出来て、強度が高く、軽量。言わずと知れた短繊維CFRP素形材製品である。気がつけば10年ほどの歳月が流れてしまっているが、その当時「何の役にも立ちません、そんな研究はバカバカしくて見向きもされないでしょう」と、大学内外からけっちょんけちょんに小馬鹿にされたのを覚えている。「実際に触ったことも無い人達なのに口だけは達者だな」と思ったことだけ、ふと、想い出した。某大阪のお企業様から、短繊維CFRPのプレス成形によるモンキーレンチが製品化され上市された。
そのお企業とはなんの関係もないのでこうして書いても問題なかろう。PCの画面上からしか解らないのだが、とても綺麗に出来ている。短繊維を開繊し、サイジングして硬化させ、型抜きしたからこそ、その良さを受け止めることが出来る。実際にやった(今もちょこっとやっている)。だから解る。まぁ、自動車関連企業の皆様とそれに関わる研究者の皆様は、高価だ、ゴミになる、弱すぎると仰ったが、100年もって、軽量で、そこそこ頑丈、金属の上に落としても火花を出さない、酸・アルカリ中でもなんともならないという優位性は認めない。
10年前の事だから、まぁ、常に早すぎるということなのだが、こんな企業群の中だから、東海地域でものづくり系ベンチャーの若者が育たないのだろうなと、改めて思うわけだ。身の回りの不具合を解決しましょうという「アイデアもの」はそこそこ受け入れられるが、本質をがらっと変えましょうなんてチャレンジングなものは排斥されるだけである。それ故に、そんな挑戦者を応援したいのだ。
そのお企業のホームページで、商品の写真をまじまじ眺めて見るわけだが「あぁ、なるほど、行き着くところは同じアイデアだな」と納得出来るわけである。思考の結果行き着いたことが、誰の手に拠ってということはどうでも良くて、それが商品として登場していることに思考は成立していたのだなと納得できるわけだ。少なくとも足を引っ張る習性は捨てても良いのになと、これからの若者にはそうあって欲しいと願う、私であります。