再来年の今月今夜の月を曇らせる程に、ダイヤモンドは男子にとってろくなもんじゃないことは周知の事実である。永遠の輝きとか言っちゃうのは女性陣なわけで、男性陣にとっては、まぁ、ご活用できるような御仁に任せておきまして、小生の如くのモノづくり屋にとっては、単なる道具だなというところ。この道具にしてもろくなもんじゃないことが多い。それは言わずと知れた潜傷問題。これが極めていやらしい。
どれだけいやらしいかと言えば、殆どの方がご存じ無いというところが何というか困ったことで、とあるスーパーニッチな分野の方々にとってはにっくき潜傷なのだが、それよりも脛の傷を気にする輩の方が多いかもしれない。半導体の基板加工に関わっている人で知らない人は居ない?のだが、同じ、ダイヤモンドを使って作るものに「工具刃物」があるんだけど、こっちの方は、ほぼ誰も知らないというか故意に無視されている。理由は簡単、それが無くなってしまうと刃物の売り上げが落ちるから。
タングステンカーバイドという地球上でもっとも硬質の金属をコバルトをバインダとして固めた塊を、マイクロメータ―オーダーのダイヤモンドを混ぜて作った砥石でがりがりと削っていく。硬いタングステンカーバイドの粒を断続的に尖ったダイヤで研削していくのだけれど、これが時々欠けたりするのですな。するとダイヤモンドの結合エネルギーが爆発的に放出されて、将来、刃物となろうとするタングステンカーバイドに傷を作っていく。100μm程の深さにまで達するのだけれど、表面からはそれは解らない割れ目となって内部に存在するので、潜む傷と呼ばれている。
いろいろな工具刃物の表面金属層を丁寧に剥がしていくと、最も凄まじく潜傷を持っているのがK社さんの刃物。これはもう「こんな物を売っているのは犯罪だろう」というレベルなのだが、まぁ、営業妨害となるので、何処とは言わない。高価な刃具なんだけど、10個の内で2個使えたら大したものだろう。ダイヤモンドは実は化学反応性もとても高くて、だから自然に出来るんだけど、鉄やタンタルなどとこすり合わせると、ものの見事にすり減っていく。脱炭と呼ばれる現象が起っていく。化学反応の目線で加工は考えるべきだ。特にこれからのものづくりに関してはね。そう思う。