趣味の世界で恐縮だが、ものを平らに加工するという方法にはいろんな種類がある。時代を遡ればヒスイに穴を空けて、ペンダントにして権威を示した勾玉も、表面はとても丁寧に仕上げられ、そしてあの穴あけ加工は出雲地方の秘中の秘だったそうで。IoTでは当たり前のCPU等々、センサなども半導体に限らず、精緻な表面で構成されている。直接磨くものもあれば、磨かれた金型で型押しして作られて、その表面が転写されてそのまま使われるなんてのもある。後者においてはスマホに無数に入っているコンデンサがその代表例ですね。
その昔は大きかったから、表面の凸凹があまり気にならなかったけど、今は100μmレベルで製品が仕上がってくるから、1μmの凹凸も許されなくなってきた。ものはどんどん小さくなり、過去に「誤差だね」とスルーしていたものが、許されなくなってきている。マザーマシンの加工精度も、そして利用環境整備にも極めてコストが掛かるようになってきた。省エネ、高効率を目指せば目指すほど、巨大な電力とコストが掛かってしまう。エネルギー削減の限界を目指すために、削減以上のエネルギーを使っていく。妙な鼬ごっこである。
趣味の世界に話を戻すのだが、ダイヤモンドの「板」を磨きたいというニーズがやたらと増えてきた。天然ダイヤよりも欠陥が少ない半導体基板として用いる為のダイヤモンド基板が、いよいよ、試作品レベルで4インチサイズのものが出回って来た。30年前は5mm角で驚いていたのだが、直径10cmものダイヤ基板が目の前に置かれるとくらくらする。現状の半導体加工技術を用いても、デバイス試験が可能になるレベルまで磨くのに約一ヶ月掛かるそうだ。それを百分の一にしたいという。
同時多発的に要求が突き付けられているので、そのフェーズに社会が入ったのだなと実感する。LSIがダイヤモンドの上で動くまでには相当の時間を要するとは思うのだが、昨今、流行りの窒化物半導体を使った外付電源モジュールなどでの活用は、海外で行われるのでは無いかと思っている。どんなに世界最高品質の技術を提供しても、国内のやる気のない企業群と新規な挑戦に取り組む気は無いので、海外メーカーがやってきたらやっちゃおうかなとは思っている。地味だけど奥深い、研磨の世界のお話です。