博士になろうよ

我が国の研究力が低下したから産業界が冷や飯を食っているのか、産業界が国内での大市場ばかりを狙ってこけ続けて、新規の研究成果を活用できなくなったから研究力が低下したと言われているのか。世界の論文数という指標を当てはめられると、我が国から発出される研究論文の凋落は確かにその通り。研究論文発出の担い手は、国際学会などでしのぎを削る博士課程学生なのだが、産業界が博士など要らんと言うし、自分で稼がないと人件費が無い状況の大学では教員ポストを作れないし。結局、日本人の博士学生がどんどんと減っていく現状に歯止めを掛けられていない。研究力の凋落の要因はそこにあろう。

ドクターコースと呼んでいる領域に入り込む前にはマスターコースというものがある。大学に依っては5年一貫で博士課程としているところもあるが、多くは前期2年、後期3年として、後期の期間をドクターコースとしている。マスターコースの時代に指導教員が、自らの評価書作りに時間をとられ、学内所作業に時間をとられ、予算獲得に走り回り、どんどんと国際会議から足が遠のき、国内の学会でも発表しないなんて状況に陥っているのを見てしまうと、後期課程に進もうとは思わないよね。

大学の人事枠は極めて少なく、ポスドクで5年や10年で職場を換わって、研究に没頭できないとかマスコミが言いまくっているから、それでも進学しようと決意する学生は少なくなってしまう。企業に就職させて頂けたとしても、4年生で卒業した同級生が、入社したら上司になって給料がそっちのほうが高いという現実の話を聞かされると、やってられるかとなるのは当然だ。チャレンジャーは海外に行く。これも当然のことだ。

研究は世界トップでなければならない。唯一無二の学理を探求せねばならない。学会を同窓会の如くの夜会の前座のように考えている者は若者の夢を奪っていることを自覚せねばならない。お前のやったことは信用できないから、全部、俺がやり直して再現したら認めてやるなんて状況で、自分も研究者になろうなんて思うはずが無かろう。信頼出来る人を育てることをせずに、学生を私物化しているような輩もご退場する時代である。研究以外の業務が多すぎる。それは感じている。思い切って削らねばならぬ。先ずはDXなのだが、大学というところはDXとはほど遠い。なんとかせねば。