加工の正常進化

たまたま磨く必要があったから、研磨という行動をずっと続けてきた。今、燃料電池という気体水素を扱う部品が当たり前のように使われるようになり、気体水素分子に適する表面創りが求められる時代になって来た。水素禍だけではなく、凹凸を極限まで無くす加工が求められるということだ。従来は研磨布・研磨紙で磨くということが当たり前だったのだが、それだと限界があるので、5μm□当たりの平均粗さを0.5nm以下にしたいということだ。

それが何だと思う方が殆どだとは思いますが、それでも皆さんがご活用の携帯電話を構成する半導体部品の加工精度から比べれば「だから何?」と思われるレベルだが、金属をその精度で加工する要求がようやくやってきたということだ。刃物で切ったり、研磨紙で磨いたりすると「虹が見える」という症状が発生するのだが、少なくとも同じ色で反射する、若しくは色が出ないレベルにして欲しいとの要求が出てくる。

高校生の物理の講義で、波の干渉のお話があったと思うのだが、ある条件が満たされると、いろんな色が混じった光を反射させると、特定の色だけが強め合って、眺めてみると、その色に見えるという奴だ。その昔は、自動車からオイルが漏れまくって、水たまりには油の膜が出来て、太陽の反射で七色に見えたものだ。それは油の膜の厚さが均一では無いから。同じように、加工した表面の粗さが均一では無いと、虹色が見えてくる。そうなると粗さが不均一、即ち、ダメな加工というわけだ。

刃物加工だけで、色を出さないことが求められ始めた。正しい方向に向かい始めたなと思う。中小企業がどんどんと淘汰され廃業に追い込まれていると日経は伝えているが、虹色を呈する表面を作る加工屋は、もういらないよと世界の声として宣言されたわけだ。次は表面の粗さだけではなくて、材料内部の歪や潜傷が問題になるだろう。必ずそうなる。水素に手を出したらそこに行きつく。愉快である。