憂国

自動車産業に限らず、多くの産業機器、事務機器は一品ものではなく、金型に頼っているところが多い。今、こうやって駄文をキーボード経由で入力しているわけだが、デスク上の樹脂製品が、金型を経ずに我々の手元に現れることは殆ど無いような気がする。勿論、ディスプレーの保護シートなどは型経由では無いけどね。細かい事を言い出すときりがないのだけれど、スマホのカメラのレンズなどは、樹脂成形品で、その精度はすさまじいものがある。

付加する技術として、積層造形、身近に言えば3Dプリンタなのだけれど、この深化が著しく、世界では金型を刃物で掘りだすよりも、より高強度の素材をサブサブミクロンの仕上げ精度で作ってしまえという基礎的研究が進められている。3Dプリンタは日本人の発想だとかそんなことばかり協調するのだけれど、実際にプリンタ製造において、そのノウハウの構築、特にソフトウエア開発において、圧倒的な差を付けられている。しかしながら、我が国においても町工場の中で3Dプリンタ開発を行っているお会社もあり、応援している。

金型にケチを付けるわけでは無く、勿論、その深化(進化にあらず)は続くのだろうけれど、精密な温度や圧力制御が必要とされる新奇の電池や医療機器の製造においては、金型の出番はどんどんと無くなり、アディティブテクノロジーに置き換わっていくだろう。国もどんどんとそっち方面に投資をして、死にゆく産業のゾンビ化を防ぐべきだ。素材から機構から電子制御からソフトウエアまで様々な学術技術の融合である。学科の垣根なんてのんきなことを言っている場合ではない。

これに限らず、全ての研究が一つの大学の一つの研究室に閉じている時代は遠い昔に終焉を迎えている。老舗の商社などが世界中の深化を見て、それを大学の中の図抜けた若い知恵の連携に力を尽くし、一人当たり億単位のお金を投資して、数千億を儲けていく。そんな挑戦をするには最後のチャンスでは無かろうか。どんどんと若者が減っていく。減っていくから教育に掛けるお金を減らそうなどという政治家は見限るべきだ。国を育てるのは国民の義務だ。3Dプリンタなどはほんの一つの事例に過ぎない。暮らしが厳しいのは自分達のせいだ。それを忘れてはならない。