愛知県下をくまなく歩いているつもりでも、未だに初めて訪れる古刹がある。その昔、ローカルネットワークでやっていた地域の歴史紹介番組で見て以来、ずっと気になってはいたものの、やたらと僻地にあるもんだから、後回しになっていたわけだ。例によって思いついたようにステアリングを握ってみると、国道の反対車線で大事故があり見物渋滞に巻き込まれ、まぁ、少しの時間ロス。そこを抜けて進んでみると、今度は出来たばかりのバイパスが改修による閉鎖。どういうことだ。
当然、これまた渋滞なんだけれど、なんとか抜け出て更に山奥。くねくね道を抜け、いよいよ得体のしれない領域に入ると、大きなため池があったりで、知らない場所の面白さよ。こんなところにもゴルフ場がというところを抜け進んでいく。勝手に門前町をイメージしていたのだが、応仁の乱で焼き払われたらしく、そのような風情は微塵もなく、突然、国指定重要文化財が現れる。余りの唐突さにあっけにとられる。
平安時代から伝わる仁王像において、日本で3番目に大きいものだそう。同じく国の重要文化財の山門に納まっていらっしゃるのだが、通常の場所ではなく、門の後ろ側に安置されていることで、紫外線や雨風から護られたのだろう。見事なまでにしっかりと自分の足で立っていらっしゃる。境内は箒の目が立ち、清楚な空気感に満ち、今まで何故、訪れなかったのだろうと不思議な気にさえなる。京都や奈良などに行かずとも良いではないか。
長い長い石段を登り、創建当時の伽藍を想いながら、汗を滴らせ本堂にたどり着く。時代を感じる石段の高さは、鉄筋コンクリートの建物の階段に慣れた足には登山感覚を呼び覚ます。深い緑が日差しを遮り心地よい空気に満ち溢れた空間を愉しむ。いよいよもって愛知県の古刹探訪がピンポイントとなってきた。他にもまだあるのだろうか?地道に探し続けてみたい。一つの楽しみである。