日々是決算

棺桶に両足を突っ込んで毎日を過ごしている身にとって、医療現場におけるAI活用がどんどん進んでくれないかなと、カプセル内視鏡での画像診断における早期病巣抽出の研究事例などを間近に見ていたので、そう願っているところだ。ところが結局のところ、現場のお医者様達の「とって変わられる恐怖」から厚労省が首を縦に振らず、例によって日本の技術は海外には流れていくが、日本では使われないという状況だ。

先日、ドック入りしてきたのだが、医療機器そのものは一年でびっくりするほどに進化していて、とある画像診断結果を見せられたらぐうの音が出なかった。お医者殿も「進化したんですよ~!」と驚かれているくらい。しかし、それは後の祭り的な診察であって、本来であれば検診途中でAIが判定して「もっとここを拡大しろ」とか、検査技師殿にアシストするとかね。容易に出来る筈なのに、日本ではそれがままならない。

病院への保険診療報酬という、ガソリンから直接・間接の二重課税をしているみたいな感じで(全然違うな)、お金で医療を縛り倒す。厚労省とすると、新奇なことを取り入れて、医療過誤が生じて「誰の責任だ!」と騒がれるのが嫌なのだろうが、医療行為で一番価値を享受できるはずの患者がそれを受けられない仕組みを国が作っているのだから腹立たしい。当然の事ながら、エレクトロニクス産業の方々にとって、認証されず、売れるまで無限に待たされる機器を作ろうなんて思えない。だから産業として失速していく。

先進医療機器と呼ばれる分野で、純国産のツールがどれだけあるのだろう。今春、某、医学部で紹介された機器を前に「これらは全て外国製です」と言われて眩暈がした。日本で作れないはずはないのだ。はずはないが、利益率が高くないと手を出さない日本企業と、任かなんてするもんかというお役所根性によって、日本人の体格にあった機器が作られていない。AIなんて現場に永遠に入ってこないのではないか。医は算術なり。親身の集金、日々是決算。予備校と同じだ。