ドクターコース

博士後期課程、所謂ドクターコースへの進学者が、この20年間で2割減ったとのこと。研究が面白いからチャレンジしてみようと思った38年前であるが、その時と今とは随分と時流が違う。当時はまだ、企業に研究所があって、博士取得者がそれなりの待遇で雇用して頂けた時代である。それがバブルが弾けてITバブルも弾けて失われたなんとか年とかになり、今や、博士を取得してもインセンティブはほぼゼロの時代。生涯賃金は大卒の方が上の日本において、博士課程の研究に物好きで取り組もうという若者の減少は停めようがない。

お上は研究のコスパを上げろとかね、何だか全くわけのわからないことを言い出すわけだが、ぴちぴちしたドクターコース学生の密度が上がらないと、ひょうきんな研究が開始されないので、世界から取り残されていくのは間違いなかろう。発想の豊かさというか、24時間、実験をし続けると、何か見えてくるものだ。絶望が見えるだけかもしれないが、それでも何かは見えてくる。そんなもんだ。

ちょっと前に、巨大な学会の支部長などを仰せつかっていたので、学会参加者の減少も極めて大きな問題と感じた。まぁ、国内よりも国際学会に出席していれば良かろうということではあるのだが、国内のコミッティに参加して、研究者仲間を作っていくということも貴重な経験で、それは若い頃が望ましいと思っている。未だに、お付き合いのある皆様は、その頃からずっと知り合いで、相談仲間でもあった。

漁業がトリチウムで風評被害に遭っているとか、そんなお話になると、東電ではなく国が借金で直ぐに補填するわけだ。ところが産業となると、票田にならないからか、ちっともアシストは無い。ましてや、大学なんぞにはびた一文だすもんか、競争して生き残れと言ってくる。多様性は必要だ。10兆円ファンドでどかどかと研究者やドクターコース学生を集めまくっても、同じ色の人種しか育たなければ、いずれ絶滅する。研究は愉快である。解らないことだらけだ。支援策は考えねばならぬが、取得した後、更に元気になるような仕掛けが必要だ。この国、大丈夫か。そう思う。