月面にて

とてつもない資金と犠牲をつぎ込んで、アームストロング船長が月面に降り立ってから50年以上の歳月が経過している。その間、夢に全く投資をしないこの国が、漸く月面に痕跡を残した。正確に言えばもっと前に本当の傷跡は付けたけど、軟着陸という、取り敢えず、信号を送ってこられる人工構造物を月面に送り込んだことは楽しい出来事である。マスコミは太陽電池が働いていないとか言っているけれど、やっとこさっとこ、降り立ったのだから、それはこれからどんどこ「想定外」を繰り返していけば、何とかなるだろう。そんなもんだ。

今、自動車分野ではそれなりの性能の車両を海外に買って頂ける状態になっているが、そうなるまでに一体どれだけの研究を積み重ねたのだ。とてつもないお金と時間を掛けて、最近はさぼるようになってきた衝突試験だって、一体、何度繰り返したのだ。暴走事故があれば車両が悪かったのではと疑われ、悲惨な状況になりながらも、一歩一歩進めてきたのだ。それで漸く、曲がって停まる自動車が出来上がったのだ。月面で宙返りするのは日本のお家芸だろう。次は頑張れと応援するのがよろしい。

現状、どのようになっているのかがわからないのが頂けない。月面に作業者が居るわけではないからそう簡単に状況が確認できないのは残念だが、二号機、三号機と飛ばして、自走するローバーも飛ばせるようになれば、逆立ちなのかどうなのか分かるのだろう。大切なのは徹底的に定量的なデータを獲得することだ。諦めたりはしないのだろうけれど、これでいいやと決して思わないことだ。想定通りになったとしても、もっと良い状況と言うのはあるはずだ。半導体分野の深化など、それに尽きる。

どんどんと半導体デバイスの素子が小さくなっていって、原子核が捕まえている電子の軌道の半径よりも小さいスイッチなんて聞かされると、量子力学的に正しいことが生じているのか疑問になってしまうのだが、それでも動いていると論文などで拝見すると、時代の進化の面白さを感じさせて頂ける。分からないから楽しいわけで、兎に角、暗いことしか起こらないこの国が、漸く、ウサギと会話できそうになったのは楽しいではないか。次にもその次にも期待しよう。月なんておもしろいじゃないか。そう思う。