遥かなる店じまい

旧正月の手前に大寒があって、今年は1月20日から2月3日の間である。だから当然寒い。北関東から名古屋に移ってくる時に、岡崎出身のY君が「福井から入ってくる寒気が伊吹山にぶつかって、関が原に雪を落とし、落ち切れなかった雪が名古屋に流れ込んでくるから、名古屋は積雪しますよ」と熱く語っていたことを、大寒の度に思い出す。成る程ね。そういう見方をするのだなと感心した。昨日の衛星の雲画像は、正にそのような状況であった。

名古屋の積雪は積もる傍から溶けていく程度なのだが、30年近く、研究室という閉じられた空間に、貯め込み続けた物は、どかせどどかせど、次から次へと湧いてくる。前職の書類などが出てきて懐かしがったりしてしまって、そうなるともう、遅々として進まない。それでも何とか、宿舎に移送する本達のパッケージングは終焉に向かっている。数年前に一度、精査しているので、廃棄はかなり少ない。入手するのに苦労した本達も、今後の人生に関わりそうにないなとなると、目の前から消えて頂くしかない。

奇特な方がいらっしゃって、引き取って頂ける書籍達も現れて、それはなんとも嬉しい限りである。片付け始めると、限られた空間を最大限に活かすには、幾つかのお作法があるなと発見もあって楽しくもある。毎日、ほんの少しなのだけれど、地味にパッケージングを続けると、あれだけ学者っぽい部屋を演出していた本達が見えなくなってくる。学者の引っ越しは本棚を空にするところからスタートだなと思うわけだ。

まだ、そこまでは到達していないが、本棚を空にして、その本棚を解体して運び出して空き地を作る。すると活動出来る床が現れる。そこを更に活用していく。その連続である。貰って頂けそうなものは送り出せば良いのだが、全てがそんなに上手く行くはずはない。泣く泣く廃棄というものも沢山出てくるだろう。数年前に貸しておいた本が、あらぬところから発見されたりとかね。歴史の清算にはもってこいだなと、店じまいをしながら考えている。