バイコーンで良い

研究者は経営者では無い。雨夜の星の如くに、極々稀に企業経営者をはるかにしのぐ銭稼ぎセンスを持った研究者が世に現れるが、それこそ雨夜の星であるから、早々滅多にお目に係れる代物ではない。学生・教員問わず、起業してユニコーンになれと、蛇口をひねるとユニコーンが飛び出してくるかの如くに政治家は目をむいて叫んでいるが、そんなわけなかろう。世界のベンチャーからユニコーンと呼ばれる社の売り上げの、ほぼほぼ9割がGAFAであって、そのへんの「10億集めました」なんてのは誤差範囲だ。

コロナ禍で少し話題になったが、遺伝子操作型創薬ベンチャーなのだが、ターゲットが決まっていて、規制的な見方が出来ると、打率は低いが一気に資金獲得という方向に向かっていく。目的が明確で、かつ、人の命を救うのだから当然の見返りである。プロセス型開発であり、素材開発と言う点においては新規樹脂開発と工程は似ているのだが、ゴール設定が明確であるという違いは大きい。

医療用ロボットなどは組み立て型のビジネスなのだが、これは二束三文になりがちなのだが、人がどのように関わって、世界に伝播させることが出来ると、サブスクビジネスとの組み合わせで資金獲得の可能性がある。先行逃げ切りのダビンチなどがその好例であろう。特許切れを待って立ち上げたヒノトリなどはご存じの通り。症例が少ない医療機器など誰が使うものか。新規の半導体プロセスとはわけが違うのだ。

日本の中からコアテク系ベンチャーのユニコーンが駆け回る日が来るかと言われれば、可能性は限りなくゼロに近いと答える。要因は簡単で、ブレーキを本社が床が抜ける程に踏みつけて、アクセルを吹かせと言うから。いくつかの大学が回避をきちんとルールを作って出来る様にしているのだが、全国的に広がるには相当の時間が掛かろう。全ての研究者がアントレプレナーであって、チャンスがあるのだが、まぁ、この国で図抜けるなど困難を極める。先ずは小さい者の集合から始めようではないか。そこからで良い。日本的である。