10号に思う

台風は大概、想定より弱くなるものだが、今回の10号はどんどんとエネルギーを蓄え、相当に危険な体力をつけて虎視眈々と陸地縦断を伺っている。ゆっくりとした歩みであればあるほど、海水温の高さからエネルギーを蓄えていく。東海地域も外周部の気流に洋上の水分が重なり、奥三河地方で甚大な被害をもたらしている。30日以上もからからの空模様であったのが、いきなり土砂降りである。平均化は望むべくもない。

気象衛星画像などをみると、巨大でくっきりとした目を持ち、久しぶりに見た豪快な台風である。小学生の時に、迫りくる台風に対して「突然、晴れ渡っても表に出て遊んではいけない。いずれ大雨が再びやってくる」と担任の先生がおっしゃったことをはっきりと覚えているのだが、まさにそんな目の状況である。50年も昔のお話になってしまったのだが、当時は台風が来ようが小学校は休みにならなかったわけで、まぁ、いろいろあったのでしょうね。

台風の目に飛び込んで台風そのものを研究する者もいらっしゃって、飛行機を操縦する者の勇気も半端ないなと感じる。映像などを拝見すると手に汗握って映画のようではあるのだが、真実であって無茶をするなと思うのだ。危険行動はご法度の研究ではあるのだが、台風しかり深海しかりである。ほんのわずかな、本当に瞬間とも言って良い気の迷いが命を失うきっかけともなろう。

H3ロケットのお話を伺ったのだが、わずか百分の三秒手前でノイズによる誤動作を防いだとのこと。これなどはフェイクニュースをしたたかに操る政治家諸氏に聞かせてやりたい。正しい人間の行動は、刹那的なフェイク(ノイズ)も許さないのだ。それこそがサイエンスを基軸にした技術である。その技術力をもってしても台風などはあやつれない。それが良いのかもしれない。人間は弱いうちが良いのであろう。そう思う。