地味が一番

プロセスインフォマティクスに対する憧れがあって、散々、古典的ものづくりを続けてきたので、折角、ここまでAIが深化して、その原理原則をイメージされたかたがノーベル賞を獲得されたりしたのだから、そろそろ計算機が「こうやったほうが良いよ」くらいのことを言って欲しいのだ。サボりたいという訳では無いのだが、ゴールに速やかに到達できるのであれば、報告のない研究分野においてだからこそ、AIに頑張って頂いて、人の代わりに天の声の如く導いて欲しいなぁと、そろそろ両足を棺桶に入れるので、楽をしてみたいものだとおもうわけだ。

AIを活用するマテリアルインフォマティクスの研究発表を聞いていて、実に面白いなと感じたのが、現場でものづくりを続けてきた方が、AIが提案した「もの凄く良いモノ」に関して「色眼鏡で見てしまって、信じられないから試さない」と、学習初期に痛い目にあったからちょっと推薦データをはじいてしまったとの現場ならではの声を聞いた。これは実にユニークである。確かに信じられないほどの予測をされたら時間の掛かるものづくりを避けたいという気持ちはわからないでは無い。

足下のお仕事なんだけど、地味に材料を粉末化させてみようみたいなことにおいて、経験値的にこうやったら良いのではと思ったことが、調査してみると「おや、こんな報告があるのね」みたいな出てきて、それも経験で導かれたことだったりするのだけれど、AIがどこまで学習しているのかということは極めて大切だなと感じた次第。まぁ、AIに聞かなくてもAIが教えてくれそうなことを一撃で見つけていたということで、生きていて良いのだなということなんだけど、地味に真面目に、そして丁寧にお仕事をしてきて良かったなと思った次第。

研究は極めて地味ですよ。地味だからこそ、思い込んでしまうと気づきが無くなってしまう。この道40年という方と話をさせて頂いて「なるほど、あなたの指摘で腑に落ちました。なんとなくそうではないかと思っていたのですが確証を得ました」と言われ、妙に嬉しくなった。図々しいお話だが、AIが10通りの手法を提案するよりも、自らが生み出した1つの方法がゴールに導いてくれている。その程度のことしかやってないということでもあるんだけどね。パラメータが無いからレフリーに文句を言われるけれど、小生的には解っちゃうんだから仕方ないじゃんと言うしか無い。政治と違って、研究は愉快である。素晴らしい。