とある分野は

とある省庁殿から人が押しかけてきて、とある分野におけることに対して「どうすりゃ良いでしょう?」と言う。どうすりゃ良いかはそっちが考える事だろうとは思ったのだけれど、考えられないからお越しになったのでしょう。お話を伺ってみたわけだ。もの根底にある考え方に、自動車産業一本足打法の我が国において、そしてその四番バッターの中京圏において、部品を作れる中小企業殿がこのままだと消えてしまうので、何とか仕事を見出して参画させたいということ。

自動車は当たり前だが、Tier0が設計し、その安全性までをエンドユーザーに約束する。だから粗利は親の総取りが実現する。それが出来ないから部品屋さんはいつまでも部品屋である。でも考えてみて欲しい。世界トップの性能を有する部品を作り出す大企業の商材であっても、同種商材を作っている他社が存在すると、最終商材の価格決定権がない以上、数が出無く成れば途端に実入りは減ってくる。赤字転落、いずれ廃業である。そこでお役所的には新しい分野にその企業群をシフトさせたいのでしょうけれど、そうは問屋が卸さない。

「とある分野」が求める精度と清浄性は、自動車分野とは3桁以上違うのだ。その分野に参入しようと考えるならば、素手で部品を触るという概念は捨てなければならない。人間はナトリウムをはじめ、その分野においては歩く公害でしかないのだ。息をしてもだめ。身体から水蒸気を出しても駄目。全てが駄目なのだ。それが清浄性。精度は熱膨張と言う原子レベルの均一性を求めてくるから、夏と冬でカンコツで機械を調整していますという上から目線は通用しない。カンコツと言った時点で参入不可だし、そもそも自動車製造機械の精度ではどうしようもないのだ。

要するに、当該地域においては「とある分野」のメジャープレーヤー認定を受けられるお企業殿は、知る限り一社のみであって、他はもう無理だ。国が融資するしないの問題では無い。それなりの人材から揃えていかないといけない。しかし、それなりの人材が居ないわけでは無い。リスキリングで、そして居抜きで機器操作からスタートして、徹底的にお金を突っ込み続ければなんとかなるかもしれない。幸い、ユーザーはリッチに存在するエリアである。プレーヤーさえ揃えばというところだが、そう簡単では無い。それが答えだ。