ビール工場はいずこへ?

五反田で旅が終わるのではなく、実は続きがあるのだ。五反田から山手線外回りに乗り換えて原宿を目指す。実は品川から神田を除く山手線の駅は、近年殆ど使わない。そもそも人口密度最大の山手線には乗りたくないのだ。大嫌いだ。あんまり言うと怒られるのでこのへんで止めておくが、兎に角、人口密集状態は嫌いなのである。たまたま土曜日の早朝であったことから、何と、普通にがら空きで着座して車窓を眺めた。着座して車窓を眺めらるくらいに人が乗っていなかったのだ。こんな東京もあるのだなと、トワイライトゾーンにでも陥ったのかと思った。

五反田を出ると殺風景なビル群の向こうに一瞬、目蒲線が見える。小生が見る車窓は山手線の内側ではない。崖が見える外側である。そこに旅情がある。ビール工場が無くなった内側には用は無いのだ。目黒駅は正に崖の上で、その昔は富士山が見えたそうだが、今はビルの壁しか見えない。もっとも、富士山を見るためには開削された丘の上に出ないといけないので、降車しないといけない。行人坂からは今も富士が見える。まぁ、富士山などは筑波の平野からだって見えるわけだから、東京からなら猶更だろう。

埼京線という図々しい名称の車線が出来てしまった為に、目黒と恵比寿の車窓が随分と変わった。最早、地方在住者には魔窟としか見えない景色である。風情もへったくれもない。貨物の引き込み線があったビール工場はガーデンプレイスタワーなどとコンクリートの墓標に代わり、人の営みなど何処にも感じない。当時、歌にもなったアメリカ橋だって、どれがどれだか分からない。恵比寿駅周辺の変貌ぶりには呆れかえる。余りにも醜い。

恵比寿から渋谷の区間は案外好みである。昔からごちゃごちゃしていたので変わりようがないということかもしれないが、小生の目にはそんなに変わっていないと映る。あくまでも外側の話だ。内側は見ないことにする。随分と長い事工事をしている渋谷を抜けると、朽ち果てた様に見える代々木体育館の屋根を見ながら、どんな最終形態になるのか想像もつかない原宿駅に着く。皇室駅舎は勿論の事、神宮への降車場も激しく工事をしていて一体どうなるのやらと思いながら降車する。