スキルを増やし続ける事

金属加工用の刃物材料にタングステンカーバイドのミクロンレベルの粒をコバルトで焼き固めた「超硬」と呼ばれる合金がある。タングステンカーバイドは今のところ地球でも最も硬度の高い金属と言われていて、それを化学反応性が極めて高いコバルトを接着剤にしてくっつけているとうものだ。それが一般的に用いられていて、形を微妙に変えながら、それこそ星の数よりも多いパターンで売られている。基本、硬いものを押し込んで、ぐりぐりと削るというやり方で、削られたものには強い歪が残る。先日書かせて頂いたが、自転車のサドルポストが折れるなんていうのはそれが原因だ。

他の金属よりも硬いことから、お互いをぶつけ合うと、超硬が勝つわけで、それが刃物という素材になっていく。なっていくのだけど、機械があって刃物があってという、形は変わらない。だから加工業界にはイノベーションはおこらない。企業における技術の積み上げからは逃れられない。だから旧態依然のビジネスモデルであって、月面で3Dプリンタで基地を作ろうなんて発想は、日本からは出てこない。なんでこんな話をしているかというと、つい先日、大企業の方々から「中小企業の人達は難しい文章を読まない」なんて暴言を聴いたから。

中小企業の皆様が知恵を出し合って作り出す商材を活用させて粗利を稼いでいるくせにだ。どちらが優秀かと言えば、当然、中小企業殿に軍配が上がるだろう。そりゃぁ勿論、図面を描けて商材を作れる力は凄いですよ。しかし、一つの部品が欠けてもそれは実現出来ないんだよね。刃物のお話をさせて頂いたのは、大企業は旧態依然で暢気だなぁということだ。古いままで居られるなんて実に暢気なものだ。そんな状態だから生産性の低い国などと言われてしまうのだ。

リスキリングなんて遠い彼方。それは古い業態が潰れないから。国が無駄なところに税金を使って、人を育てるところにお金を使ってこなかったから。先程の会合で出てきたのが、弊社には安価なリスキリング教室がありますよと、まるでとんちんかんなことを言っていたことに驚かされた。高額で良いのだ。今までの社会を越えるモノづくりなりをしないといけないのに、町の文化教室と同じではいけないのだ。自分を鍛えることにお金をださないといけない。国が助成してくれれば更に良い。人である。全ては人である。人にこそ投資をしないといけない。それをやってこなかったから国が亡びる。それだけのことだ。